映画感想「ペンタゴン・ペーパーズ/最高機密文書」報道は国民に仕えるもの

映画感想「ペンタゴン・ペーパーズ/最高機密文書」報道は国民に仕えるもの

トム・ハンクス、メリル・ストリープが主演で、さらにスピルバーグ監督と、極上の豪華メンバーがそろっています。
安心して観に行けます。

鑑賞前はずっしり重めの社会派ものかと思っていましたが、鑑賞後は最高のエンターテインメント作品を味わった感触を覚えました。

【評価】
メッセージ性:★★★★★
歴史の教科書:★★★★☆
ペーパーレス:★☆☆☆☆

作品情報

キャスト&スタッフ etc.

出演:
トム・ハンクス
メリル・ストリープ

監督・脚本:スティーブン・スピルバーグ
製作国:アメリカ
上映時間:117分
公開:2018年(日本)
原題:『The post』

あらすじ

国家の最高機密文書<ペンタゴン・ペーパーズ>。
なぜ、アメリカ政府は、4代にわたる歴代大統領は、30年もの間、
それをひた隠しにしなければならなかったのか―。

1971年、ベトナム戦争が泥沼化し、アメリカ国内には反戦の気運が高まっていた。国防総省はベトナム戦争について客観的に調査・分析する文書を作成していたが、戦争の長期化により、それは7000枚に及ぶ膨大な量に膨れあがっていた。
ある日、その文書が流出し、ニューヨーク・タイムズが内容の一部をスクープした。
ライバル紙のニューヨーク・タイムズに先を越され、ワシントン・ポストのトップでアメリカ主要新聞社史上初の女性発行人キャサリン・グラハム(メリル・ストリープ)と編集主幹ベン・ブラッドリー(トム・ハンクス)は、残りの文書を独自に入手し、全貌を公表しようと奔走する。真実を伝えたいという気持ちが彼らを駆り立てていた。
しかし、ニクソン大統領があらゆる手段で記事を差し止めようとするのは明らかだった。政府を敵に回してまで、本当に記事にするのか…報道の自由、信念を懸けた“決断”の時は近づいていた。

引用:http://pentagonpapers-movie.jp/

予告編

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感想(ネタバレなし、のつもり。)

演技力と演出力に震える。

主演二人とスピルバーグ、そして製作スタッフ一人ひとりの一流のお仕事を堪能できます。

今回のメリル・ストリープは映画『プラダを着た悪魔』での社長役とは真逆です。
亡き夫から新聞社「ワシントン・ポスト」の経営トップの座を継承し、会社の命運と社員の人生を背負ってしまう元専業主婦です。
会社の重役たちとの会議の場で、言いたいことが言えずに自信を無くし落ち込むところなど、とてもリアルに演じています。

トム・ハンクスはというと、何があろうと”真実”を国民に伝えようと奮闘するワシントン・ポストの熱血編集部トップを演じます。
映画『ダヴィンチ・コード』や『キャストアウェイ』などの”追求し続ける”、”諦めない”という役が本当に似合っています。

そんな二人は、経営者と現場主義者という異なる立場で、ベトナム戦争の真実を国民に隠し、報道を抑圧しようとするアメリカ政府に対して共闘していきます。

個人的に、新聞の原稿作成から印刷までの一連のシーンがお気に入りです。
アクション映画の見どころのような迫力があって興奮します。

報道の自由 vs アメリカ政府

「報道は、歴史書の最初の草案となる。」
劇中のセリフが、いちいち心をしびれさせます。
セリフの通り、国民が歴史の真実を知るには、報道は不可欠です。

ストーリーの序盤、1966年のベトナム。
ベトナム戦争の実態を調査すべく、米政府の軍事研究員エルズバーグはベトナムの戦地に向かい、
国民に政府が発表している内容とは真逆の「アメリカの勝利は絶望的」という真実を目の当たりにします。

ほんの1分程度だけですが、ベトナムでのゲリラ戦のシーンがあります。ベトナム軍の強さに恐怖します。これが10年も続いたのか。。

そして、政府の隠蔽に反感を抱いた彼は、ベトナム戦争の真実が書かれた極秘文書を新聞社(最初はNYタイムズだけ)に漏洩します。

この序盤のあたりで、新聞社、政府の人物が大量に登場するので若干パニックになります。”全員スーツのアベンジャーズ”状態です。
しかし、ストーリーの流れはわかりやすいので中盤から盛り上がりを見せます。
序盤では、新聞社と政府の”日常”を楽しむことにしましょう。

極秘文書をどうにかゲットしたワシントン・ポストは、社内で意見が分かれます。
真実を報道するか否か。
ここでキャサリン(メリル・ストリープ)は経営のトップとしての決断を迫れら苦悩します。

政府は、泥沼化したベトナム戦争で勝ち目がないことをすでに悟っています。
しかし、ここでアメリカがベトナムから引けば、共産圏(当時のソ連、中国)からはもちろん、世界中からナメられます。
そういった理由でアメリカは簡単には引けない状況でした。

この真実を報道すれば、政府によって共謀罪と法廷侮辱罪のダブルコンボで刑務所行きか失職の恐れがあります。会社の存続も危うくなります。

まだまだ女性が経営に立つというのが珍しい男社会の中で、この決断を委ねられる。
手が震えて吐きそうになります。

決断に至るまでの間、異なる性格、異なる立場にいながらお互いを尊敬し合うキャサリンとベン。
そしてワシントン・ポストの勇敢なる戦士たちの支え。

信念を貫き通す仲間がいることと、その信念を貫き通す使命があること。
これらが”決断”に至る理由だと感じます。

退屈しない人生のために

真実を伝えるという報道の使命と、その決断を迫られた専業主婦の成長を、史実から巧みにエンターテインメント化された良作です。

アメリカ側の政府、報道機関、国民の立場からベトナム戦争を垣間見ることできます。
真実を求めるという姿勢が、今まさに必要だと改めて感じました。

映画のストーリーと同じような緊張感・危機感を、映画製作者から感じ取れるような気がします。

最後のシーンでの『ワシントン・ポストは帰ってくる。』と言わんとするような、アメコミ映画風の終わり方が妙にぞくぞくしました。

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