映画感想「長江 愛の詩」難解なストーリーだが、美しさと切なさが味わえる

映画感想「長江 愛の詩」難解なストーリーだが、美しさと切なさが味わえる

美しい雰囲気を味わえる映画が観たいと思ってたところ、偶然レンタル屋で発見しました。

タイトルの通り、長江という中国の大河を舞台にした物語です。

長江に沿って続く街や自然の美しさと切なさ、とある男女の恋模様を詩と映像で表現しています。

雰囲気は美しいですが、ストーリーは難解です。論理ではなく感情で楽しみましょう!

【評価】
風情  :★★★★☆
難解さ :★★★★★
切なさ :★★★★☆

作品情報

キャスト&スタッフ etc.

出演:
チン・ハオ(ガオ・チュン:父の詩をもとに長江を遡る)
シン・ジーレイ(アン・ルー:ガオ・チュンの行く先々で現れる美女)

監督・脚本:ヤン・チャオ
製作国:中国
上映時間:115分
公開:2016年(中国)
原題:「長江図」

あらすじ

死去した父親の後を継ぎ、小さな貨物船の船長となったガオ・チュン(チン・ハオ)。ある日、ガオは機関室で長江図と題された一冊の詩集を見つけ、そこには彼の父親が20年前の1989年に創作したいくつもの詩が記されていた。上海から長江を遡る旅へ出発したガオは詩集に導かれるようにして、行く先々の街で出逢うアン・ルー(シン・ジーレイ)という名の女と再会を繰り返していく。不思議なことに彼女と再会する場所は、すべて「長江図」にその地名が綴られていた。しかし、三峡ダムを境に彼女が現われなくなったことにガオは気づくのだった…。

引用:オフィシャルサイト

予告編

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感想(ネタバレなし)

正直意外だった美しさ

長江の大きさ、美しさに驚きです。とても雄大です。

最近の中国といえば、経済発展の裏で深刻な環境破壊が進んでいる国という印象が強いです。

そんな国の映画がここまで美しいとは、正直驚きましたね。

 

長江の下流から上流へと遡る船の錆びた鉄や巨大なエンジン音、船から眺める川岸の町並み、自然の変化が、まるで自分がその船の船員であるかのように感じます。

所々船員の目線と思わせるような撮影の仕方をしているからでしょう。

もちろん日本ではあまり見られない景色ばかりで、別世界に飛び込んだような気分になれました。

ストーリーは単純のようで難解

主人公ガオ・チュンは亡き父の手帳「長江図」を頼りに上海から長江を遡ります。

ガオは立ち寄る先々で美しい女性アン・ルーと出会います。

なぜいつもガオが行くところに彼女は現れるのか。

なぜ会うのが初めてではないような気持ちになるのか。

考えても全然わかりません。

映画を観終わった後にわかるかもしれないですし、2回観ないとわからないかもしれません。

明確な説明が会話に出てこない(セリフ自体が少ない)ので、一つ一つのシーンから想像するしかありません。

ですのでこの映画は、楽しめる人とそうでない人にはっきりと分かれそうですね。

感想(ネタバレあり)

ここから先はネタバレを含む感想を書いていきます。

 

長江を遡るということ

実は予告編の動画の中にヒントが隠されており「長江を遡ることは、時を遡ること」を意味しています。

SF映画のようなタイムスリップではありません。ここもまた表現するのが難しい。

 

これは、ガオが父の詩を読みながら長江を遡るにつれ、物語の真意に近づいていくということだと思っています。

アン・ルーの登場の仕方、様子を見ても、時を遡っていることが感じられます。

 

アン・ルーの正体

ガオの行く先々で現れたアン・ルー。

その正体が分からないのは、彼女の役柄、登場人物としての設定が定まっていないから。

これはもちろん、あえて設定を曖昧にしています。

 

序盤ではある船で暮らす?お姉さん。誰かの夫なのでは?と思いました。

中盤では寂れた農家で暮らす若妻のような雰囲気。

アン・ルーって農業を営んでいたの?と思いきや、次は川に囲まれた孤島に現れたり、寺院で修業していたりします。

多趣味な人なのか、幻想なのか紙一重です。

 

ガオが長江を遡ると必ず現れる彼女ですが、三峡ダムを境に現れなくなります。

さすがにダムを越えるのは無理だったか。と思った矢先、物語終盤、両側の川岸を険しい山で囲われた長江上流で再び彼女は現れます。

川岸のがけを川に沿って進む彼女を船で追いかけるガオ。

立ち止まった彼女に近づくため、錨を下ろし船を止めるガオですが、彼女はまた歩き始めます。

 

そこへ現れるもう1隻の船。

その船にはアン・ルーの姿と、一人の男性の姿が。

ガオはその船のすぐ後ろに自分の船を近づけ、仲睦まじそうな二人を見て、彼は気付くのです。

 

彼女の乗った船は消え(ここで鳥肌が立ちました)、ガオはさらに上流へと進みます。

川の水は無く、まるで火星のような大地を上へ上へと進みます。(雪は降ってますが)

 

進んだ先には墓があり、「ずっとあなたのおそばに。 アン・ルー」という文字が。

その墓を触ろうとするガオに、墓の目の前の小さな小屋に住む老人が一言。

「さわるな」

 

彼の旅がここで終わるということを意味しているのだと思います。

もうアン・ルーと一緒にいた男を追うのはおしまいだ。ということです。

二人はガオの両親だったのです。

 

三峡ダム以降しばらくアン・ルーが現れなかったのは、昔そこにはダムに沈む前の街があったから。

彼女とガオの父親はそこで会っていたんです。きっと。

時代が進むにつれて便利にはなるけど、その裏では自然や古くからの街が消えていくのは切ないですね。

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退屈しない人生のために

1回観て、その後気になるシーンを何回か観直してやっと理解できましたね。

私は観て良かったですね。

こういう映画が中国にあるんだということに気付けたことですし。

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