【写真作例付き】FUJICA RAPID S & S2 修理記録:シャッターと絞りの粘りを解消

【写真作例付き】FUJICA RAPID S & S2 修理記録:シャッターと絞りの粘りを解消

こんばんは、慧です。

今月は別の記事でも紹介したとおり、ラピッドシステムのフィルムカメラを修理しました。

フィルムの装填に関わる部分が特殊なだけで、シャッターや絞りなどのコアな部分は他のカメラと大差ありません。

いつも通り不具合を起こしている箇所を特定して、修理とクリーニングを行いました。

紹介するのはフジカラピッドSとS2の2機種。

FUJICA RAPIDとは?

FUJICA(フジカ)は富士フイルムが販売していたフィルムカメラのブランド。

FUJICA RAPIDは今からちょうど60年前、1965年に発売された国産初のラピッドシステムのフィルムカメラ。

35mmの希少なスクエアフォーマット

FUJICA RAPIDには「S」「S2」「SF」「D1」の4機種があり、この度入手したのは「S」「S2」です。

「S」はおそらくSquare Format(スクエアフォーマット)の意味で、その名の通り画角が真四角

「S2」も真四角フレームを有し、おそらく「SF」(スクエア+フラッシュ)も同様だと思います。

中判カメラであれば、多くの二眼レフカメラが真四角フレームであるのに対し、35mmフィルムを使うカメラで真四角はあまり見かけません。

そのため、前々から使ってみたいとは思っていたものの、ラピッドシステムに必要なカートリッジがカメラよりも希少で手が出しにくかったのです。

しかし運良く、カートリッジとセットでカメラをゲットできたため、ついにラピッドデビュー(35mmスクエアデビュー)することが叶いました。

ラピッドシステムのメリット&デメリット

ラピッドシステムで必要なカートリッジは以下の写真のようなものです。

フィルムが巻き付く軸はなく、単にフィルムが内部で巻かれています。

そして撮影時に必要なカートリッジは2つ。

以下のように2つのカートリッジを装填し、巻き上げを行うとフィルムの入ったカートリッジから空のカートリッジへと、フィルムが移動していきます。(もちろんフィルム室の蓋を閉じてから巻き上げる)

装填してみて分かったことは、とにかくフィルムのセットが簡単であること。

左の写真の状態で蓋を閉じて巻き上げれば、自動的にフィルムがもう一方のカートリッジに吸い込まれていきます。

つまりフィルム装填の失敗がほぼゼロとなります。

また、撮影中にうっかり蓋を開けてしまっても、ほとんどのフィルムがカートリッジ内にあるため、光漏れの影響が最小限で済みます。

 

以上の優れたメリットがあるのにも関わらず、ラピッドシステムはフィルムの歴史の闇に埋もれてしまいました。

その理由の一つがおそらく、撮影可能な枚数の少なさです。

ラピッドシステムの生みの親「AGFA」もスクエアフォーマットのカメラを市場に出していましたが、なぜ24mm×36mmの画角ではなかったのか。

答えは単純で、カートリッジに十分な長さのフィルムを収めることができなかったのです。

24mm×36mmのコマ数で言うと、わずか12,3枚程度しか確保できなかったようです。

これを24mm×24mmの真四角に縮めることで、やっと撮影枚数を16枚まで稼ぐことができました。(長さで言うと60cmくらい)

それでも、30枚以上撮れる従来のカメラに比べたら約半分の枚数であるため、その少なさは無視できません。

 

実はラピッドシステムが登場した背景には、KODAKの「インスタマチック」という新規格フィルムとの「フィルム装填の簡略化競争」がありました。

これについては、本記事の主目的から話がずれていってしまうため、割愛したいと思います。

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修理:羽の粘りを解消

今回の修理は「S2」のみ。

「S」は内部構造がシンプル故に、あまり不具合を起こすことは無さそうです。

セレン電池&露出計のチェック

さて、「S2」にはセレン電池と露出計が備わっています。これが正常に動作していないと、まともな撮影は困難。

軍艦部を開けて、露出計の針が光の量に応じて反応するかを見てみます。

上の写真のように、スマホのライトをセレン電池に当てると、針が動いてくれました。これで一安心。

シャッター羽&絞り羽のクリーニング

修理のメインはシャッター羽と絞り羽の粘りの解消です。

露出計は機能していましたが、絞り羽の反応が悪く、明るい環境でも羽が十分絞られていませんでした。

また、シャッター羽も明らかに粘っており、途中から羽が閉じなくなってしまいました。

下の写真がシャッター機構。羽が半開きになっています。

今回は重症なので、羽を外せるところまで分解してきます。

左がシャッター羽。右が絞り羽。油汚れが見えます。

これらをベンジンでクリーニングし、組み立て直したら、無事シャッター羽と絞り羽がまともに動くようになりました。

最後に、前面の外装は分解時にヨレヨレになってしまったので、紺色のスウェード生地を貼り直しました。

それにしてもデザインがかっこいい。

作例:予想以上にくっきりと

修理後のテスト撮影では、古い使い捨てカメラの期限切れフィルムを使いました。

2000年代に「トップバリュ」のブランドで販売されていたものです。

以前、別の記事でも紹介したことがあるフィルムで、今回も約15年の期限切れ品。

しかし意外にも発色は狂っておらず、良い作例写真が撮れました。

FUJICA RAPID S

「S」絞りがF11固定、つまりパンフォーカスで、シャッタースピードは1/30秒と1/120秒の切り替えがマニュアルでできます。

そのため、操作感はシャッタースピードを切り替えられる「写ルンです」と言っても良いでしょう。

実際に横幅は「写ルンです」とほぼ同じで、この時代(60年前)から既に「写ルンです」に必要な技術は揃っていたように思えます。

 

以下、作例になります。ISO感度は100程度になるようにシャッタースピードを調整しました。

朝の公園。

真四角フォーマットの「写ルンです」な写りですね。

 

葉っぱの透明感も良い感じに写りました。

遠景の景色もかなりくっきり。

白と赤の遊具のあたりが、おおよそ3~4mくらい。そこが一番ピントが合っている気がします。

1mくらいの距離で撮った薔薇。まあまあな写り。

最後は多重露光です。操作ミスで生まれた写真ですが、被写体の組み合わせが絶妙で、結果的に多重で良かったです。

「S」は、巻き上げとシャッターチャージが連動していないため、巻き上げなくてもシャッターを切り続けることができます。

また、フィルムの装填が楽である(スタート位置を合わせやすい)ことを考えると、一度通したフィルムをもう一度一コマ目から多重露光させることも容易かもしれません。

FUJICA RAPID S2

次は「S2」です。

露出はオート、フォーカスはマニュアルです。

ISO感度の設定は、カートリッジ側に仕掛けがあります。

カートリッジにはT字の金具がくっついていて、凸部分の長さに応じてカメラ側での露出計の動きを決めてくれます。

「G」と刻印されているものはISO感度が100で、今回の撮影にはぴったりです。

 

それでは作例です。

咲いたばかりの紫陽花です。葉脈がくっきり写りました。

次は薔薇。背景のボケ感がきれいです。一コマ目なので右側が少し感光しています。(正規品であればこういうことはないと思います)

奥に続く通路。

白い猫。ピントがばっちり。

カラフルな布。期限切れフィルムの割にはがんばっています。

横浜駅周辺を高いところから。

少し色褪せた発色がたまりません。天気も曇りだったので、ビルの汚さと雰囲気が合っていますね。

無限遠のはずがほんの少し手前にピントがずれているような気がします。

分解時には印を付けるなどして注意していましたが、無限遠が少しずれたかもしれません。もしくは元々そういう設定だったかもしれません。

ただ、近い距離での撮影結果は自分の目測通りだったので、このまま使い続けようと思います。

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退屈しない人生を共に

初めてのラピッドシステムカメラ、FUJICA RAPID SとS2を修理しました。

修理内容は羽のクリーニングをしただけですが、分解したものを元に戻す作業に少し苦戦しました。

セレン電池と露出計を繋ぐ導線を切断してしまったり、シャッター内の小さいバネを無くしたり、トラブルも多発。

修理に丸一日も使ってしまいました。(バネは翌日見つかりました。)

学校の授業準備もあるので、休日を一日すべて潰すのは控えたいところです。

ところでトップバリュフィルムの作例は以下の記事でも紹介しています。

このフィルム、おそらく二度と手に入ることはないでしょう。

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