【写真作例付き】YASHICA Half 17 修理記録 Part2:露出オートをNDフィルターで補う作戦

【写真作例付き】YASHICA Half 17 修理記録 Part2:露出オートをNDフィルターで補う作戦

こんばんは、慧です。

Yashica Half 17の修理に再挑戦しました。

前回修理に失敗したオートモードは、一部の条件を除き無事に復活。

その一部の条件では一工夫することで、逆に撮影の幅が広がりました。

せっかくの大口径ハーフカメラなので、なんとか使い続けたいのです。

シャッターの構造分析

前回の修理では露出計連動によるオートモードが上手く機能せずに終わってしまいました。

今回はその原因解明と修理完了を目指して、シャッターの構造をなるべく深く調査することに。

結論を言うと、今できることをしましたが修理完了度は70%くらいです。

シャッタースピードと絞り

まずは、Yashica Half 17のシャッタースピード絞りがどのように生み出されているのかを観察してみます。

下の写真の通り、シャッターの内部はメインの5つの要素から構成されていて、「A」~「E」で表現することにします。

まずシャッターチャージをするとL字型の「A」が時計回りに約30度回転し、「A」に「B」が引っ掛かることでチャージ状態を維持します。(白点線部)

次にシャッターを切ると、「B」が動き上記引っ掛かりが解除されます。同時に「A」の右側が「C」のホイールをはじきシャッター羽(絞り羽)が開閉します。

ここで「C」はシャッターの開閉のみに寄与しており、その開き具合は「D」「E」の動きで決まります。

 

Yashica Half 17には、露出計に連動したオート露出モード(絞りリング:Auto)と、シャッタースピードを固定して絞りのみを手動で制御するマニュアルモード(絞りリング:各絞り値)があります。(オリンパスのTRIP35やPEN-EEシリーズと同様)

「D」「E」の動きは、上記2モードで異なっています。

シャッターを切る際、下の写真で「E」の右側面(水色のライン)に「D」の棒状部分(水色の円)が衝突しますが、この衝突にかかる時間と「D」の運動する距離(水色の矢印)によって、シャッタースピードと絞り(シャッター羽兼絞り羽の開き具合)が変化します。

マニュアルモードでは、「E」は固定された状態となり、シャッタースピードは最長の1/30秒、絞り値は最大開放で1.7となります。(写真左)

オートモードでは、露出計の出力によって「E」の位置が上下し、「D」と衝突する箇所が変わります。

露出計への受光量が多いとき(晴天時など)では写真中央のような位置関係になり、受光量がそれよりも少ない時は写真右のように「E」がより上に移動し、衝突にかかる時間が長くなります。

以上の挙動をEV値に関連させて整理すると、以下の表になると予想できます。

※絞り値1.7の列およびシャッタースピード1/800秒の行の( )は、それぞれ絞り値2.0、シャッタースピード1/1000秒のEV値。

先述の通り、マニュアルモードではシャッタースピードが1/30秒で固定となり、絞り値のみ可変です。(絞り値は、絞りリングと連動する「A」~「E」以外の部品によって決定される)

オートモードは、シャッタースピードと絞り値が同時に変化していき、特にどちらかを優先するような仕組みは見られないため、表の通り線形的にEV値を上げ下げするものだと考えられます。

オート設定時の不具合

前回の修理では、オートモードでの挙動が良くなく、高EV側(明るい環境)での作例が眩しすぎるという失敗に終わりました。

一方で露出計の肝であるセレン電池は元気よく動いているので、露出計からシャッター側への伝達部分に不具合があると予想。

下の写真は露出計周りの構造です。

セレン電池の出力は細い金属の棒(赤丸)が左右に動くことで、シャッターへ伝達されます。(青丸)

青丸の棒がシャッター側に露出計の出力を伝達していて、今回はその伝達が上手くいっていないのがオートモード不具合の原因。

具体的には、シャッター側の伝達部(下の写真の黄色の丸)の部品が変形してしまっていました。

正常であろう状態に形を直して組み直しましたが、それでも今回も完全には修理しきれませんでした。(さらに修理するには該当箇所が正常なジャンク品を仕入れないといけない)

結果、オートモードでの撮影は一部の条件で一工夫する必要が出てきたので、次の章で説明します。

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近接撮影での制約

再修理の目的はオートモードの復活でしたが、一部の条件で不具合が残存してしまいました。

距離を0.8m(最近接)~0.9mに設定すると、(どんなに明るい環境でも)強制的にEV7の露出設定となってしまう不具合です。(下表の赤丸)

この時の距離設定ではレンズを前面に繰り出すせいで、上の写真で示した「伝達部」が上手くかみ合わなくなるのが原因と推測できます。

従って、明るい環境で接写する際は、NDフィルターを使うなどしてレンズへの受光量を落とす工夫が必要です。

作例:日中の絞り開放が良い

今回は光量を5段階落とせるNDフィルターも使って再テスト撮影をしました。

フィルムは廃盤となったフジカラー100の24枚撮りです。

36枚撮りは品薄だけどまだ手に入ります。しかしハーフカメラにとっては枚数が多すぎるかもしれない。

NDフィルター無し

まずはNDフィルターを使わずに撮影した作例です。

接写しなければ露出はそこそこ合っていそうです。

 

1枚目は、川。

やや逆光にも関わらず、眩しすぎず良い感じ。

 

2枚目は、川。

川の色が良い。右上にある草の反射をもう少し含めたかったかも。

 

3枚目は、夕刻のホース。

日没直後のためやや暗い環境。

この位の明るさが無理なく撮れる。

 

4枚目は、夕刻の田畑と山。

やや空が飛びがちだけど、田畑の色が黄色みがかっていて綺麗。

 

5枚目は、日没後の交差点。

マニュアルモードのF4.0(1/30秒, EV9)で撮影。

 

6枚目は、日没後の海。

ややピンク色の空とブルーグレーの海の組合せが綺麗。

インスタグラマー的なことをしていたカップルを右下におさめました。

NDフィルター有り

次にNDフィルターを使った作例です。

マニュアルモードとND32フィルターを駆使すれば、EV7(日没後)~EV18(晴天)での撮影も可能。

 

7枚目は、日向の赤い花を使った比較。

オートモードかつ接写での撮影なので、このカメラ固有の不具合が発生します。

左が不具合発生時の眩しすぎる写真。1/30秒、絞り値1.7です。

右はNDフィルターをかまして光量を5段落とした写真です。

今回はたまたま「5段下げ」によって適正露出になったので、くっきりした奥行きのある写真が撮れました。

個人的に日中で絞り値1.7はかなり珍しい条件。

 

8枚目は、透ける葉っぱ。

こちらも1/30秒、絞り値1.7に「5段下げ」で適正露出となった作例です。

色のコントラストが高く、ピントがもっと合えばハーフカメラとは思えない写真になったかも。

 

9枚目は、銀杏の木。

1/30秒、絞り値2.8で撮りました。

色がしっかり出ていてます。もう少しで銀杏も見頃ですね。

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退屈しない人生を共に

Yashica Half 17の再修理と再テスト撮影をしました。

シャッタースピードの仕様上の最高速度「1/800秒」がやっぱり出ていないような気がしますが、オートモードはそれなりに復活させることができました。

近接撮影では制約があるけど、NDフィルターとマニュアルモードで補えるレベル。

今回の失敗で新しい撮影方法に気付けたので、別のカメラでも「日中の絞り開放」を試していこうと思います。

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