こんばんは、慧です。
1年ほど前にフリマアプリでMinolta Repo(ブラック)が高額で取引されているのを見かけましたが、最近(2022年後半)はかなり安くなった気がします。
そして運良くジャンク品を1000円台でゲットしたので、修理とテスト撮影を行いました。
だいぶ痛んでいた個体でしたが、最短撮影距離が0.6mで物撮りに使いやすく、修理して正解でした。
Minolta Repoの特徴
Minolta Repoは2種類しかないミノルタのハーフサイズカメラの一つで1963年発売。もう一つはMinolta Repo Sで翌年1964年の発売です。
Minolta Repoには上の写真のものとは外観が異なる初期型も存在していたり、本体が銀色のノーマルカラーのものもあります。
どちらもおしゃれでかっこよく、なおかつ銘玉レンズ「Rokkor(ロッコール)」を積んでいます。
しかし発売した当時はオリンパスのハーフカメラ「Penシリーズ」が大人気で、Minolta Repoはハーフカメラ界では影が薄め。
というのも、自動露出制御のPEN-EE系統の機種に比べると、Minolta Repoは撮影に一手間かかります。
それを手間と思うか、楽しみと思えるかは人によって好みは別れるけど、当時はウケなかったようですね。
追針式露出計とプログラムモード
Minolta Repoにはセレン電池による露出計を積んでいる点では、オリンパスのPenシリーズと一緒。
しかし露出設定と連動しておらず、追針式により手動で露出を合わせるという手間が生じます。(レンズ周りの露出リングを回す)
上の写真の窓部分で、オレンジ色の針がセレン電池の出力を表し、緑色の針は手動の露出合わせに応じて動き、2つの針が一致したところが適正露出となる。
追針式露出計の指示値(EV値)は8~16の範囲で、これを利用したプログラムモードではシャッタースピードと絞りが同時に制御されます。(個別に好き勝手に設定できない)
また、シャッタースピードを固定し、絞りを任意に調節できるマニュアルモードもあります。
具体的な露出設定については、下表の通り予想しています。
特徴的なのは、プログラムモードではEVが16から13まではシャッタースピードが最速の1/250秒に固定で、絞りのみが開いていくという点。
そして、EV12以下でシャッタースピードと絞りが同時に変化していきます。
このMinolta Repoの変則的な制御のおかげで、手振れが起きにくくなっています。設計者の優しさが伝わってきますね。
ちなみに直前に修理したYashica Half 17では、このような変則的な挙動ではなく線形的にシャッタスピードと絞りを変化させています。(以下の記事を参照)
シャッター構造の分析
上述したプログラムモードの内容は、シャッターの内部を見てみるとある程度予想できます。
下の写真で、水色で示した絞り制御穴と、黄色で示したシャッタースピード制御穴の形状をよく見てみましょう。
簡単に言えば、絞り制御穴の開きが大きい部分は、絞りの値が大きくなります。最大でF2.8、最小でF16です。
シャッタースピード制御穴でも同様に考えます。(穴の開きが大きいと、シャッタスピードは長い)
全ての条件でシャッターをいじって調べてみると、以下の関係性が見えてきます。
当然、露出リングを回すと二つの穴は同期して回るので、絞りとシャッタースピードを個別に調節できないようになっている。
その大前提のもとで分析すれば、上記のような予想が立つわけです。
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不具合1:不動箇所多数
さて、今回もジャンク品として入手したので、いつも通りいくつか不具合がありました。
ひとつひとつの不具合から察するに、以前誰かが修理に失敗したのではと予想しています。
上の図の左側から、絞りを制御するための部品が折れ曲がっていたり、バルブを維持するための部品が欠落しています。(修理失敗によるものと推測)
そしてシャッターが切れないので、スローガバナーや羽の粘りは確認できません。
さらには露出計が光に全く応答しません。セレン電池は生きていると思われるが。おそらく配線または電磁石への何かしらの負荷が生じていそう。
原因:部品の脱落・破損
最も致命的なのはシャッターが切れないということ。
そのため一度シャッター周りを全て分解して、他の不具合の原因も探りつつシャッター復活を最優先に作業していきます。
そしてシャッター不動の原因は予想以上に早く発見することができました。
上の写真の左で、レリーズボタンとシャッターの接続部分にネジが挟まっていました。(こういう原因は個人的に可愛いと思えてしまう)
このネジを撤去すると、シャッターは無事に動くようになりました。しかし粘りがあるので、いつも通りスローガバナーと羽を洗浄します。
次に中央の写真で、シャッターの奥にバルブ制御棒らしき部品が挟まっていました。
これは分解中に撮影している写真をぼーっと眺めていた時に偶然見つけました。
最後に右の写真は露出計の心臓部である電磁石です。奥にネジが挟まっていて、露出計の針の動きをしっかり邪魔してしまっています。
最初に見つけたネジと同じもので、これらのネジはストラップを付ける金具を固定するためのものであることが分かりました。
以上ですべての不動箇所の原因は特定できました。
対策:可能な限り原状復帰
ここでは絞り制御棒とバルブ制御棒の修理内容について示します。
絞り制御棒の土台が折れ曲がっていることについては、少しばかり力業で直すしかありません。
そしてバルブ制御棒の脱落については、接着剤を使用します。(何度も着脱するような部品ではないため)
以上の対応で、写真のように概ね原状復帰ができました。
動作品を別に持っているわけではないけれど、最終的に問題なく稼働しているので問題ないでしょう。
不具合2:光漏れ
シャッターが正常に動作するようになったので、1回目のテスト撮影を実施しました。
しかし、シャッター開閉のタイミングと巻取り部分で光漏れしていることが分かりました。
下の写真はシャッターを切るタイミングで発生したと思われる光漏れ。(一部のコマで発生)
各コマの左側全面と右側の帯状の光漏れが、両コマで共通しています。(右側は一見、”夕日の赤”と勘違いした)
さらにネガを観察すると、パーフォレーション(縁に一定間隔に空いている穴)付近に影のように感光している箇所があります。(右下の写真)
これは、巻取り部分において重なり合っているフィルムのパーフォレーションから漏れた光によるものです。
原因:モルトプレーンの劣化
光漏れの多くの原因は、モルトプレーン(遮光材)の劣化です。
上の写真のように、フィルム室に隣接する部品に貼られたモルトプレーンがボロッボロです。
シャッター修理に夢中になってしまい、見逃してしまいました。
砕け散ったモルトプレーンの残骸を残しておいてもデメリットしかないので、早急に取り除きます。
対策:フェルト・毛糸による補修
今回の対策は、フィルム室とレンズの隙間およびフィルム室内の遮光材の貼り付けとなります。
面部分にはフェルトで、細い箇所には毛糸でモルトプレーンの代用とします。
いい加減、黒いテープをゲットしなければ。
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作例:1.0m以下のすすめ
今回の作例は、光漏れ対策前後のフィルム2本分、計10枚を紹介します。
概ねオートモードで露出計の指針通りに露出を設定しており、たまにNDフィルターやマニュアルモードを使って遊びました。
光漏れ対策前(写ルンです)
対策前では写ルンです(ISO400)から抜き取ったフィルムを使いました。
余談ですが、「1枚だけ撮ったあと使わなくなった」という期限内中古品を激安でゲットしたのでした。
それでは作例になります。
1枚目は、公園の鳩×2。
フィルター:なし
頭上からの鳩の糞にはイラつくことがあるけれど、歩いている鳩は可愛いですね。
LV値14は絞りが8.0なので、広い範囲で緩くピントが合っています。
2枚目は、日当たりの植物。
フィルター:なし
長崎彼女に家にある、窓際の植物。
影が予想以上にくねくねしている。
撮影距離は1.0m。
3枚目は、川。
フィルター:なし
無限遠で撮った写真。無限遠調整は上手くいっている模様。
水面に反射した空の色が綺麗。
4枚目は、ワーゲン。
フィルター:なし
いたるところが錆びているワーゲン。
たまに走っているところを見かけていたのですが、ついに所在地を突き止めました。
撮影距離は0.8mで、かなり解像度が高いように思えます。
5枚目は、タイル状のガラス窓。
フィルター:なし
平面を撮るときは絞っているとはいえ、ピント合わせがシビアになりますよね。
6枚目は、木の陰。
フィルター:なし
木と葉っぱと電柱の影が、団地の壁に絵のように写っているのが好き。
光漏れを起こしていない写真を選んで紹介してみました。
眩しい状況でも光漏れしていないのは、劣化したモルトプレーンにより生まれた隙間の分だけ、部品がずれたりずれなかったりしているからかもしれません。
光漏れ対策後(NEOps800)
対策後は光漏れの有無のみを観察したかったので、思いっきり期限の切れたコニカのフィルムを使いました。
このNEOps800から、16年期限切れのISO感度800のフィルムを抜き取ります。電池の液漏れによる影響を奇跡的に回避していました。
+1段明るめに撮りましたが、+2段にすれば良かったです。
また、NDフィルターを使うことで、日中の開放寄りの写真も撮ってみました。
これにより光量を5段階落とすことができます。
それでは作例第2段です。
7枚目は、レトロな街灯。
フィルター:なし
フィルムの劣化がかなり激しいですが、黄色と緑のスケルトンが写っていて良かったです。
8枚目は、逆光下のエンジェルトランペット。
フィルター:ND32
楽器みたいな植物だなと思って調べてみると、やっぱりそういう名前でした。
雲一つない逆光だったので露出計の指針は振り切れていて、フィルターを付けた状態でLV16(最大値)の適正露出となりました。
また、撮影距離は最短の0.6mです。
ここまで寄れるハーフカメラは他にほとんど無いのでは?
9枚目は、落ち花。
露光時間:1/30秒
フィルター:ND32
やや逆光下で、フィルターを使って開放のF2.8で撮りました。
マニュアルモードなのでシャッタースピードは自動で1/30秒になります。
ピンクと白が良い感じ。
10枚目は、イチョウの葉。
フィルター:なし
最短距離0.6mで撮った紅葉と銀杏の葉。
劣化したフィルムにしては上出来な秋の写真です。
対策後ではすべての写真で光漏れが見られなかったので、これにて修理は完了です。
概ね近い距離で撮影すると、このカメラの実力が垣間見られる気がします。
退屈しない人生を共に
ミノルタのハーフフレームカメラ「Minolta Repo」を修理してテスト撮影を行いました。
撮影最短距離が0.6mとかなり接写に強いので、それを活かして対象に近づいて写真を撮るのが面白いと思います。
もう一台くらい仕立ててフィルムカメラ初心者にプレゼントしたくなるようなカメラでした。
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