【写真作例付き】OLYMPUS 35-S(F1.9) 修理記録:巻き上げ不動の解消と「写ルンです」フィルムでの撮影

【写真作例付き】OLYMPUS 35-S(F1.9) 修理記録:巻き上げ不動の解消と「写ルンです」フィルムでの撮影

こんばんは、慧です。

オリンパスのフィルムカメラと言えば、TRIP35やPENシリーズが人気。

一方、個人的にはそれらの影に埋もれてしまった印象のカメラが、このオリンパス35-Sです。

リコー35のように「社名+35」と名の付くレンジファインダー機に興味が出てきたので、オリンパスにも手を広げてみたのです。

結果、最高のジャンク品と巡り合うことができました。

OLYMPUS 35-Sの特徴

オリンパス35-Sは1955年発売のレンジファインダー機。

二重像による連動距離計を積んでおり、さらにシャッターチャージが巻き上げ連動で、当時のカメラではかなりの高性能機だったと思います。

(露出計は付いていないけど、最近ゲットしたRICOH GRⅢxを使う機会が増えるので気になりません)

レンズは最初期のF3.5のものが発売されてから、F2.8、F1.9と徐々に大口径化していき、今回入手したのはF1.9レンズを積んだ最大口径のものです。

今までTRIP35やPENばかりを修理してきた私からすると、それらよりも昔に製造されたカメラにこんな大きなレンズが付いているのが驚きです。

さらにこの「35-S(1.9)」以降、さらに大口径レンズを積んだ「オリンパスSⅡ1.8」がわずか2年後に発売されています。

このときデザインが少し変わり、ファインダー部分の機能もアップしました。

しかし「35-S(1.9)」の方が金属感リッチのデザインで私の好みだっため、下位の機種ですがこちらを入手しました。

金属鏡胴へのシャッタースピード、絞り、距離の刻印がかっこいい。

プラスチック部分はレンズ周りのリングだけなのでは?と思うくらい金属率が高い。

訂正:レンズ周りのリングも金属製。

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不具合:巻き上げできず

さて、今回入手したジャンク品は致命的な不具合がありました。

それは「フィルムの巻き上げレバーがピクリとも動かない」です。

よって分解前にシャッターの動きも確認できません。

後述しますが、不幸中の幸いレンズの状態はかなり良く、修理へのモチベーションは上がる一方です。

原因・対策:底面部のネジ締め調整

結論から言うと、巻き上げ不動の原因は、とあるネジの締めすぎによるものでした。

下の写真は底面の蓋を開けた状態で、「シャッターチャージの巻き上げ連動」の肝の部分です。

大きく分けて、AとBの可動部で構成されており、Bのレバー右側にあるネジ(赤点線)が異常にきつく締められていました。

それによりBのレバーが可動しない状態でした。

ここで簡単に「巻き上げ連動」の仕組みを説明します。

【Step1】初期状態

AとBのレバーがおおよそ平行に位置しています。

Aの左側が巻き上げレバーと直結しており、巻き上げレバーを回すとAが動き、Aの右側部分がシャッターレバーを回す仕組みになっています。

Bのレバーは、シャッターチャージ後に巻き上げできないようにするための「巻き止め」を行います。

今回の不具合は、このBのレバーが常に巻き止めしている状態になってしまっているということ。

 

【Step2】巻き上げ途中

上述の通り、巻き上げるとAのレバーが動きます。

同時にBのレバーも左側に動きます。

 

【Step3】巻き上げ終端位置

最後まで巻き上げた状態です。

 

【Step4】巻き上げ完了

巻き上げレバーから手を離すと、Aのレバーが初期状態の位置に戻ります。(逆回転して戻る)

Bのレバーはその場に留まり、巻き止め状態になります。

緑色の点線部分の突起が、巻き止めてくれます。

そしてシャッターを切ると、Bのレバーが元の位置(Step1)に戻ります。

しかし、先ほど示した赤点線のネジががっちり締まった状態だと、Bのレバーは元に戻りません。

これは明らかに不自然な状態で、もしかすると巻き上げ完了状態で前の所有者がネジを締めすぎたと思われます。(修理ミス?)

 

以上より、赤点線のネジを適切なトルクで締めなおすことで、巻き上げ不動は無事解消しました。

その他:ファインダー・レンズ清掃

巻き上げ不動の他に致命的な不具合はありませんでしたが、いつも通りシャッター清掃と注油、ファインダーとレンズのクリーニングを行いました。

 

ファインダー清掃は、軍艦部を開けてアクセスできる部分のみ(ほぼ全て)対応しました。

二重像の縦ずれは無さそうだったので、サクッと終了。

ファインダーから見える景色が既にフィルム感があります。

 

レンズ周りは、経年による汚れとカビが見られました。

前の所有者が修理を試みたと思ったのですが、レンズの汚れ具合を見ると何十年もいじっていないのかもしれない。

小さな傷があったけど、撮影には影響しないでしょう。

後玉が白くくもりやすい事で有名なオリンパスのZuikoレンズ。

この個体は全く曇りがなく、優秀なレベルでした。

作例:F1.9の実力を垣間見た

テスト撮影では「写ルンです」のISO感度400のフィルムを使用。

期限は3年半ほど切れていましたが、色合いは問題無さそうでした。

ただ粒状性があまり良くないかも。

 

1枚目は、キャベツ畑。

F値:5.6
露光時間:1/500秒

真ん中あたりの葉っぱに、顔のパーツのような穴があるのが分かりますか?

そこにピントを合わせました。問題無さそうです。

 

2枚目は、まだ緑のもみじ。

F値:4.0
露光時間:1/500秒

葉っぱの透き通った色が好み。

背景のボケもやや丸くて良い感じです。

 

3枚目は、何かの花。

F値:8.0
露光時間:1/500秒

団地を撮りたかったので、手前の花をメインと思わせつつ撮りました。

これが最後のコマで、この1枚だけやや黄色く色褪せた色合いになりました。不思議。

 

4枚目は、白い彼岸花。

F値:11
露光時間:1/500秒

こちらはテニスコートを撮りたくて、敢えて白い彼岸花にピント合わせました。

自分の中で新しい「思わせぶり写真」のジャンルができてきました。

本当に撮りたいものを背景にしてボカすの、ちょっと面白い。

 

5枚目は、蛇口とホース。

F値:2.8
露光時間:1/5秒

3枚目と4枚目に引き続き、本当に撮りたいものは背景にあります。

そうだね、青いホースだね。

 

6枚目は、夜の葉っぱ。

F値:2.8
露光時間:1/5秒

街灯の光で葉っぱが透けているのが綺麗です。

そして低速側のシャッタースピードも問題無さそうです。

 

7枚目は、夕焼け。

F値:11
露光時間:1/500秒

空がややボソボソしてるけど、色は綺麗に写りました。

 

8枚目は、オレンジ色の花。

F値:1.9
露光時間:1/500秒

相変わらず花の名前が全然分かりません。

今回のテスト撮影では数少ないF1.9開放時の写真。

背景のボケ方が綺麗。

 

フィルムの感度が400だったので、このカメラの最大の特徴である「F1.9」での撮影があまりできませんでした。

次は低感度フィルムで開放気味で遊んでみようと思います。

あと、二重像と実際の写真のピント位置が予想以上に完璧にマッチしていたのは、非常に嬉しい。

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退屈しない人生を共に

オリンパス35-Sを使ってみて、巻き上げ時の感触とシャッター音が非常に心地良かったのが印象的。

写りの良さもフィルム次第でさらにアップするだろうし、長く使っていきたいカメラが1個増えました。

こういう楽しさがあるのなら、下位のF2.8レンズのものを先に試せばよかったかもしれない。

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