こんばんは、慧です。
「トリガー式巻き上げ」と言えば、RICOHのレンジファインダーカメラの特徴のひとつ。
そんなトリガーが搭載された最後のカメラがRICOH JETです。
レンズはF2.8とF1.9の2種類があり、今回修理したカメラはF2.8のもの。
シャッターチャージができない不具合があったけれど、無事直せたので希少なロシアンフィルムでテスト撮影しました。
RICOH JETの特徴
RICOH JETは、トリガー式巻き上げ機構が搭載された最後のリコーカメラ。1959年発売。
前機種のRICOH 500 DeLuxeより近未来的な外観をしています。
特にファインダー部分の見た目が特徴的で、これは採光式フレームを搭載しているため。
レンズはF2.8を積んでいますが、このカメラの発売から2ヶ月後にはF1.9バージョンが登場。
当時は、焦ってF2.8を買ってしまった人がいたかもしれません。
今ではどちらも2000円前後で入手できるので、私はどちらもゲットすることができました。良い時代になったけど、逆にフィルムが希少に。。
ちなみにどちらのレンズも富岡光学製。
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不具合:シャッター不動
今回のジャンク品の不具合箇所はシャッター周り。
巻き上げてもシャッターがチャージされず、そのためシャッタースピードすら確認できません。
部品が抜き取られているという最悪の事態が考えられましたが、原因は経年劣化によるものと推測できました。
原因:シャッターチャージ不良
以下の左の写真は、シャッター内部での巻き上げとシャッターチャージの構造を示したもの。
上の赤丸は、巻き上げトリガー(チャージレバー)とシャッターチャージの接続部分。
巻き上げるとチャージレバーがリングを押し回して、下の赤丸にあるストッパーにリングの突起が引っ掛かります。
まさにこれがチャージ状態。
しかしこのカメラの場合、右の写真のようにストッパーまでリングの突起が届かない。
対策:チャージリングの改良
リングがあと1~2mm程度回ってくれればチャージ状態になるので、チャージレバーまたはリングの形状が経年で変形してしまったのかもしれない。
従って、リングの形状に手を加えることにしました。
写真の赤丸部分は前述したチャージレバーとリングの接続部。左のチャージレバーが右のL字(リング)を押すことでシャッターがチャージされます。
対策として、正常にチャージされるようL字形状をわずかに鈍角よりに変形させました。
シャッターが切れるようになった後、シャッター周りを清掃しシャッタースピードの確認をしました。
概ね良好な結果となりました。
作例:ブレにくいカメラ
今回のテスト撮影ではロシアの現行カラーネガ「Silberra Color 160」を使いました。
現行とは言っても、今後輸入の機会が極めて少なそうなので、廃番と言っても過言じゃなさそうです。
1枚目は、青空と雲。
建物は写したくなかったのですが、失敗しました。
でも雲のディテールが写せたので良かった。
ISO50のSilberra Color 50に比べて白飛びしにくいかも。
2枚目は、夜景。
歩道橋の上から撮影。
安定したところにカメラを置けば、ISO感度160でも夜景が撮れますね。
色合いはやや緑色。
無限遠はしっかりくっきり写っています。
3枚目は、窓と瓶。
丁度アメリカンな瓶が飾ってあったので、ソール・ライターを意識して撮影。
曇りの日だったせいか、色合いもレトロに。
それにしても、1/15秒の割にはブレていない。
4枚目は、教室。
あまり彩度は高くないような気がします。
フォーカスは前から3番目の赤い椅子に。
窓の外のボケ感はブレているような見た目に。(綺麗なボケとは言いづらい)
机と椅子だけを撮れば良かったかも。
5枚目は、ガソリンスタンド。
中央の黄色にフォーカスを合わせました。
距離計、無限遠の調整もうまくいっているようです。
やはりブレに強い。
6枚目は、パイプ。
開放がF2.8程度でも立体感のある写真が撮れます。
そして写真の左側にフォーカスを合わせても特に問題なさそう。(四隅の写りを確認した)
こういうパイプとか錆びた色合いって、ファイナルファンタジーⅧの「フィッシャーマンズホライズン」っぽくて良いよね。
7枚目は、池の波紋。
ただ単純に波紋を背景にして撮りたかっただけの一枚。
カラーだと色に惑わされて波紋のコントラストに集中できないから、モノクロより面白くないかも。
8枚目は、白い小さなバラ。
白い花をしっかり写したかったので、1段暗めにして撮りました。
おかげで花弁の陰影を写せました。
緑と白の2色で整っている感じがExcelっぽいですね。
全体を通して狙いのポイントにフォーカスが合っていて、満足な撮影となりました。
1/15秒という低速でも、カメラが重いせいか手ぶれによる影響が少なかったように思えます。
巷では「焦点距離[mm]の逆数」が手ぶれの影響が表れ始めるシャッタースピードの境界だと言われています。
つまりRICOH JETだと焦点距離45mmなので、1/45[秒]より長いシャッタースピードだとブレやすい。
その割には今回の作例ではブレが少ないので、日ごろの筋トレのおかげか、写真を見てる画面が小さいだけなのか、のどちらか。
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退屈しない人生を共に
RICOH JET(F2.8)の修理を行い、ロシアンフィルムでテスト撮影しました。
部品の形状を調整しただけの対策なので、再発の可能性は大いにありえます。
都度今回の対策をしていくと部品の強度も落ちていき、最終的にはシャッターもしくはリングをまるごと交換することになりそうです。
RICOH JETは安くジャンク品が手に入るけど、流通数はかなり少ないのでどうにか一生耐えて欲しい。
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