こんばんは、慧です。学生時代は宇宙物理学を研究していました。
研究の一環でスイスとフランスの国境にある「CERN(セルン)」という研究施設に行ったことがあります。
一般の人には普段馴染みのない場所だけど、映画やアニメにたまに出てくるのでそこで初めて知る人が多いかもしれません。
今回は、実際に1カ月間CERNで研究活動していた私が、浅くまろやかにCERNでの思い出を語ります。
CERNとは?
Conseil Europeen pour la Recherche Nucleaireというフランス語の頭文字をとったものがCERNです。
CERNは1950年代にヨーロッパ諸国が共同で開発した物理学の研究施設で、現在は日本やアメリカなどの世界の国々が最先端の物理学の研究のために利用しています。
場所はスイスとフランスの国境を跨ぐように位置していて、地下には素粒子を加速・衝突させるためのドーナッツ状の加速器(LHC)があります。ドーナッツの全長はなんと27km!(山手線は34.5km)
そんなCERNは映画やアニメによく登場するので、危ない実験をしている印象が強いかもしれません。
「Steins;Gate(シュタインズ・ゲート)」での設定
シュタインズ・ゲート(略してシュタゲ)というSFアニメ(元はゲーム)では、SERN(セルン)という名前で登場します。
中2病で男子大学生の主人公が、偶然にも過去にメールを送れる電子レンジを発明したことがきっかけで、SERNに目を付けられてしまいます。
シュタゲの世界ではSERNはタイムトラベルの研究を極秘で進めており、世界の支配構造の頂点に君臨しようとしているのだ!
細かい紹介は抜きにして、まずは理系男子にはシュタゲを観てほしいです。
私はレンタルですべて観終わった後にブルーレイボックスを買ってしまいました。
ちなみに本物のCERNの職員にもシュタゲのファンがいるとか。
「天使と悪魔」での設定
映画「ダヴィンチ・コード」の続編でもあるトム・ハンクス主演の映画「天使と悪魔」にもCERNが登場します。
この映画ではCERNが反物質の生成・収集に成功したのですが、悪い人に反物質をあっけなく奪われてしまいます。
反物質は簡単にいうと普通の物質と電気的に逆の性質があります。
例えば、電子(普通の物質)はマイナスの電荷を持っていますが、陽電子(反物質)はプラスの電荷を持っています。
反物質は物質と接触すると大きなエネルギーを放出して対消滅します。
話を戻すと、この映画でのCERNは現実世界のCERNと近いと思います。
主人公のラングドン博士(トム・ハンクス)は謎を解きながら反物質を取り返そうとがんばります。
「現実世界」では?
実際のCERNでは、どんな組織がどんな実験を行っているかを極秘にしているということはありません。
私が所属していた研究室では宇宙を飛び交う放射線の起源やダークマターについて研究していました。
最近だと2013年にヒッグス粒子という「存在するはずだけど、誰も見たことがない粒子」がCERNでの実験で発見されました。
このように素粒子のよう微小な世界から宇宙のような巨大な世界まで、最先端の物理学を研究しています。
あと意外と知られていないのですが、HTMLやWWWなどのインターネットの基礎はCERNが発祥の地です。
世界の研究者がCERNの実験データを閲覧できるように作られたのがインターネットの始まりです。
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CERNでの思い出
私がCERNに行ったのは大学院2年生の9月で、約1カ月滞在していました。
会社の内定式がなければ、もうちょっと長い期間スイスにいれたのに、今思うととても残念です。
でも研究、観光など色々貴重な体験ができたので、大学、大学院に通った意味がありました。
外国語が飛び交う環境で研究
私の研究室ではNASAのチーム、イタリアのとある大学のチームと共同で研究しています。
なのでCERNではイタリア語の会話が聞こえてきますし、NASAの人にCERNを案内してもらったときはもちろん英語でした。
実は外国人と英語で会話したのはこのときが初めてです。
大学の4年間では講義を受けたり、実験のレポートを書いたりとまだまだ受け身な姿勢で勉強していましたが、研究室に入った後は能動的な姿勢で勉強していかないと、研究に必要なレベルに到達できないことに気付きました。
英語ができて当然、研究員の一員として行動するのは当然。
正直、学生だった私には辛い時期でしたが、今では良い思い出です。
毎日タルトを食べました。
CERN内には食堂があり、ボリュームたっぷりなんです!
毎日違う種類のタルトが登場するので、毎日タルトを食べてました!
ブルーベリーのタルトが美味い!
ただし値段は約1000円。毎日のランチに1000円は学生にはきつい。。
レジで会計するときフランス語で値段を言ってくるのですが、大学の第2外国語でフランス語を選択したのがここで活きました。
あと、パンが食べ放題だった気がします。
ジュネーブ探索
CERNはスイスの大都市のひとつジュネーヴの近郊に位置しています。(ちなみに首都はベルン)
CERNの入り口あたりからトラム(路面電車)に乗って20分くらいでジュネーヴの中心街に行くことができます。
ジュネーヴはフランス語圏なのでトラム内の音声案内はフランス語です。
「ギャヘェコフナヴァン」と案内が聞こえたらそこで降りる合図です。
「コルナヴァン駅」という意味です。
コルナヴァン駅からは「レマン湖」「旧市街」「国連」へ徒歩で行けるので、CERN滞在中は週に3回くらいジュネーヴ観光を楽しみました!
別の記事で後日紹介しようと思います!
CERNに行く方法
シュタゲに触発されCERNに行きたくなったら、主に2通りの行き方があります。
一つは一般人でも行けるCERN公式ツアーです。
もう一つは物理学を専攻できる大学に進学して、CERNと関わりを持つ研究室に配属されることです。
CERNツアーに申し込み
CERNの公式ホームページからツアーの申し込みができます。全部英語ですし、現場でのガイドさんの説明も英語です。
私はツアーでは行ったことないですが、色んなところで写真を撮っても良いようなのでおすすめかもしれません!
お土産屋さんもあるのでぜひ行ってみてください!
あのヒッグス粒子も売ってます。(写真右下)
また入口付近にはドーム状の建物があり、その中では「宇宙の誕生から今まで&CERNの役割」を3Dマッピング+フランス語音声で楽しめます。
映像を見るだけでも十分楽しいですよ!
CERNの敷地内の通りにはすべて科学者の名前が付けられています。
これは私の好きな科学者のアインシュタイン通り。
湯川秀樹通りもあるので探してみよう。
施設内に入ると加速器を制御しているコントロールセンターも間近で見れるようです。
私は研究者という立場でのぞきに行ってみました。
念のためモザイクを。
理系学部に進学
こちらの選択肢は、高校時代にシュタゲにハマったりして理系に目覚める必要があります。
きっかけは人それぞれで、私の場合は映画「バック トゥ ザ フューチャー」が科学への興味を持ったきっかけです。
高校3年生くらいになって、(CERNというよりも)宇宙の研究をしてみたいと思って物理学科を選択しました。
宇宙の研究って大学院などの研究機関に所属しないとできませんからね。
CERNに行ける大学を選ぶ際のキーワードは大雑把に「宇宙放射線」「加速器」「素粒子」「原子核」などです。
高校の物理では浅くしか勉強しないので、高校生にとってはあまり馴染みがないかもしれません。
関東で宇宙についてだと東京大学、東京工業大学、早稲田大学、青山学院大学あたりが思いつきます。(他にもたくさんあると思います)
ちゃんと勉強しないと入学できないので、シュタゲを観る時間と勉強時間のバランスに気をつけましょう。
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退屈しない人生を共に
初めての海外渡航で1カ月も滞在するのは不安だったけど、いざ生活してみると日本との違いが見れて楽しいものです。
意外とCERNの中で実験している間は「外国にいる」という感覚にならなかったのも印象的でした。(外国人はたくさんいたけれど)
塾講師の仕事を本気でやりながらの宇宙の研究は、人生の中でかなり忙しくきつい時期でしたが、結果楽しかったので満足です。
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