【写真作例付き】フレクサレット(Flexaret)Ⅵ型 修理記録

【写真作例付き】フレクサレット(Flexaret)Ⅵ型 修理記録

こんばんは、慧です。

先日フリマアプリで珍しい二眼レフカメラをゲットしました。

かつて存在したチェコスロヴァキアという国のカメラです。

他の二眼レフと見た目が違うだけじゃなく、中身の構造もユニークでした。

試写したところ、不具合がちらほら発覚したので修理を実施。

本記事では手探りで修理した記録と、作例を紹介してみます。

フレクサレットを手に入れた!

偶然フリマアプリをチェックしていた時に、オススメ商品のトップにフレクサレット(Flexaret)が現れました。

色、形が他の二眼レフカメラとは大きく異なり、一目で特別なカメラなんだと分かりました。

二眼レフの品名としてよくある「〇〇flex」ではなく、「”Flex”aret」という名前も独特です。

少なくとも日本製の二眼レフは「Mamiya”flex”」とか「Ricoh”flex”」のように、”flex”が後ろに来ますからね。

 

値段も3000円以下だったので、迷うことなく購入。

商品の到着を待ちながら、フレクサレットについて色々調べてみると、今は無きチェコスロヴァキア製であることが分かりました。

私が幼稚園の時に愛読していた国旗の絵本にはまだ存在していた国です。

今はチェコとスロヴァキアに分離していて、当時フレクサレットを製造していたメオプタ社は、チェコの光学機器メーカーとして現存しています。

そんな歴史の深そうなカメラで一体どんな写真が撮れるのか。

不具合修理をしながらトライアル撮影をしてみました。

 

「MADE IN CZECHOSLOVAKIA」が感慨深い。

不具合1:規定の枚数が撮れていない

レンズとシャッターの汚れを軽く取り除き、最低限写真が撮れる状態にして撮影してみたところ、12枚撮れているはずが8枚しか撮れていませんでした。

撮影時には12枚分取っていたのだけど、最後の4枚がフィルムに残っていないという状況です。

一応補足すると、二眼レフのような中判カメラに使っている120型フィルムは、6cm×6cmの写真で最大12枚撮れます。

まず1枚だけ作例を紹介します。

フィルム:Kodak Portra400VC(2008年有効期限切れ)
F値:11
露光時間:1/200 秒

現象:コマ間距離にばらつきが発生

「最後の4枚だけが撮れていない」という点は大きなヒントで、シャッターの動作は問題ないことが分かります。

また、ネガを見てみると写真のコマ同士の隙間が広すぎることが分かります。

水色の破線枠が撮影したコマ(約6cmの正方形)で、コマ間の距離(水色の矢印)に大きなばらつきがあります。(長いところで4cmくらい)

正常な場合だとおそらく、コマ間の距離はもっと短くいずれの箇所も同じくらいの狭さになるはず。(下図の(1))

これはフィルムの巻き過ぎの際に発生する不具合で、他の二眼レフではあまり見かけない。

(35mmカメラのオリンパスPEN-DやPEN-Sなどで起こりやすいが、根本的な原因は少し異なる。)

よくよくフィルム搬送の構造を観察していると、フレクサレット特有の機構による不具合であることがわかりました。

原因:フィルム搬送時の滑り

対策を考えるためにまずはフィルム搬送とシャッターチャージの仕組みを理解します。

以下がフィルム装填時のフィルム室内部です。

①のフィルム巻き上げノブを回すことで、フィルムが右側に搬送されると同時にシャッターがチャージされます。

あとはシャッターボタンを押せばパシャっと撮影できるのですが、一つだけ他の二眼レフと異なる部分があります。

それが②の巻き上げストッパーです。

 

大抵の二眼レフ(オートマット系)は、①と②が一つのモジュールで構成されています。

そこがフレクサレットだと二つに分かれていて、②の巻き上げストッパーはフィルムが接触しつつ搬送されることで動作します。

要は、①でフィルムを回し、搬送されたフィルムを介して②のストッパーに力が伝達します。

 

しかし私が購入したカメラは②の動作が不安定でした。

そのため、以下のような流れで不具合が発生しました。

フィルム搬送の力がストッパーに上手く伝達できない。

巻き上げが止まりにくい。

コマ間の距離が広くなる。

12枚分の写真がフィルムに収まらなくなる。

 

そして、フィルム搬送の力がストッパーに伝わりにくいのは、部品の経年劣化で必要な摩擦力を得られていないと推測しました。

対策:巻き上げストッパーの太さUP

原因となっている、フィルムとストッパーの接触部分が下図のピンク枠のところです。

正常な場合、この接触部分がフィルムの動きに合わせて回転し、フィルムが1コマ分搬送されたときにストッパーがかかります。

ただ、約50年前のカメラということもあり、接触部分が劣化して摩擦係数が変化し、フィルムが滑ってしまうという状況です。

 

そのため、摩擦力を増やすために接触部分の周囲(円周部分)にテープを貼り、軸を太くしてみました。

紙テープ2周分なので0.5mm程度太くなり、裏蓋と巻き上げストッパーにフィルムが挟まれる際に摩擦力が増えます。

再試写の結果、コマ間が安定して狭くなり、無事に12枚撮れるようになりました。

なお、再試写の際に、フィルム巻き上げノブを何度(回転角)回したかを大雑把に記録してみました。

概ね、1回のシャッターチャージにつき350度~460度回しており、フィルムの太さ(半径換算)14mm~21mmを考慮すると、約6.5 cmずつフィルムが搬送されていることが計算で確認できます。

(フィルムを巻けば巻くほど、空のスプール”芯”にフィルムが巻かれていくので太くなる。よって、ノブを回す回転数も少なくなる。)

つまり、1コマ6 cm+コマ間0.5 cm=6.5 cmを安定して確保していることの裏付けになります。

最初の試写の時は、明らかに2回転(720度)も回していたことがあったので、計算しながら撮影することで安心できました。

以下が計算メモです。

※フィルム厚:0.55mm(仮)
 スプール(芯)半径:11mm

 

ここでもう1枚作例を紹介します。

フィルム:Fuji Pro160NS(2004年有効期限切れ)
F値:11
露光時間:1/400 秒

露光時間はフィルムの劣化具合も考えて、1/200 秒にすれば良かったかも。

不具合2:無限遠でのレンズと距離表示にずれ有り

もう一つ不具合があって、こちらは少々厄介です。

1回目の試写の時からですが、無限遠にフォーカスを合わせた際に、ファインダーから見える遠景の画像がボケていました。

下の写真が、無限遠でフォーカスしたときの写真です。

フィルム: Kodak Portra400VC(2008年有効期限切れ)
F値:4
露光時間:1/100 秒

遠景(山)にピントが合っていないのが分かります。

ファインダーでも合っていません。(テイクレンズとビューレンズではフォーカスが一致していそう)

現象:無限遠でピントが合わない

状況を整理すると、下図のように無限遠でフォーカスを設定しても、遠景にピントが合いません。

しかし、下図のように7mのあたりだと遠景にピントが合います。

つまり、カメラの設定と、実際に見えている画像とが一致していません。

あるべき姿は、無限遠に設定すれば遠景にピントが合う、という状態です。

原因:ヘリコイドの位置ずれ

原因として考えられるのは、もちろんレンズの位置が狂っているということ。

工場出荷時以降で分解などしていなければ狂うことはないと思うので、前所有者がレンズ周りをいじったのかもしれません。

 

ここでレンズ周りの機構を紹介します。

レンズはフィルム面に対して離れたり近づいたりして、近いものや遠い景色にピントを合わせます。

簡単に言うと、短いパイプのような台座にレンズを乗せて、台座が上昇下降することでピントを合わせるという機構です。

その台座をヘリコイド(下図③)と呼び、それを操作するのがフォーカスノブ(下図④)です。

この写真ではレンズを撤去していますが、ちょうどレンズのある方向から見ている状態です。左右の穴の上に二つのレンズが並びます。

無限遠でピントが合わないのは、フォーカスノブとヘリコイドの接続が工場出荷時の初期値からずれてしまっているせいでしょう。

例えるなら、誰も乗っていない状態で体重計が10kgを示しているようなものです。50kgの人が乗ると60kgと表示され、実際の体重と一致しなくなるということです。

対策:ヘリコイドの無限遠調整

対策としては一つしかなく、ヘリコイドとフォーカスノブを正しく接続することになります。

つまり、誰も乗っていない体重計で0kgが表示されるようにメモリを調整します。

 

言葉で書くと簡単なのですが、これがかなり時間のかかる作業になりました。

調整をしては無限遠でピントが合うかチェック、を何度も繰り返します。

ある程度はあたりをつけて挑むので2,3回で終わりましたが、「これこそ修理」という感じです。

 

ここでは「無限遠でピントが合うかチェック」の部分を写真で紹介します。

下の写真がその外観です。

まずフレクサレットとデジカメを、無限遠にフォーカスを合わせた状態で向き合わせます。

つまり、どちらのカメラも無限遠を撮影しようとしている状態です。

 

次にフレクサレットのフィルム室に、仮想的なフィルムを用意します。

すりガラスとかに傷をつけたものをフィルムに見立てて、フィルムがあるべきところにセットします。(写真左)

 

仮想フィルム面の後ろから光を当てると、フレクサレットのレンズを通して、デジカメに光が入ります。

このときのカメラのレンズを通る光路を簡略したのが写真の上にある模式図です。(左右のピンクの図形はすりガラス)

 

そしてどちらのカメラも無限遠の設定なので、デジカメにはまるで遠くに仮想フィルムがあるかのように映ります。(写真右)

 

実際に仮想フィルムが映っている様子を撮影したのが下の写真です。

すりガラスの傷にピントが合っていれば、フレクサレットの無限遠の調整は完了です。(写真左)

もしずれていれば、ボケた写りになります。(写真右)

 

あとは忘れずにビューレンズ(ファインダー)で見たときのピントも調整します。

こちらは簡単で、まずいもねじを緩めてビューレンズの固定を解除します。

無限遠にフォーカスを合わせた状態にし、ファインダー上でピントを合わせて完了です。(いもねじも締めておく)

ビューレンズは、傷がつかないように消しゴムを軽く押し付けて回しました。。

修理後の外観と作例

今回、幸運にも格安でゲットできたフレクサレット(Ⅵ型)。

不具合があったものの修理することができ無事正常な撮影が可能になりました。

外観はこんな感じで、大理石調のシールを貼って本来のグレーカラーを引き継ぎました。

※最新の作例は現在撮影中で、出来上がり次第こちらに載せます。

退屈しない人生を共に

フレクサレット(Ⅵ型)を修理してみた感想は、一言で言うと「独特」です。

他の二眼レフカメラとは明らかに設計思想が異なり、分解修理は割と難易度が高かったような気がします。

具体的にどんなところに差があるのかを書こうとすると、この記事ではボリュームがでかくなりすぎるので、別の機会にとっておきます。

あとは当時のチェコスロヴァキアを囲む世界情勢が、フレクサレットの設計や製造にどう関係していたか、調べてみると面白そうです。

1968年の「プラハの春」がまさにフレクサレットの製造時期と重なるのです。

歴史のお勉強にもなる良いカメラです。

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