こんばんは、慧です。
フィルムには色々な種類があって、ISO感度という光に対する感度もフィルムを選ぶ基準の一つ。
かつては現在主流のISO100~400とはひと桁違う1600の超高感度を持つフィルムが存在していました。
今は期限切れでも1本3000円以上の値が付いていて手が出せない。
そこで同等のフィルムが装填されているらしい、安価な「写ルンです」から抜き取ってみようというお話です。
写ルンですの高感度フィルム
フィルムカメラからデジタルカメラ、スマホへと、10年ちょっとで写真撮影の主役はあっという間に移り変わっていきました。
しかし今でもフィルム自体は流通していて、手軽にフィルムカメラを楽しむための使い捨てカメラ(レンズ付きフィルムとも呼ばれる)も健在です。
以下がカメラ屋さんなどで現在でも販売されている富士フィルム社製の「写ルンです」です。(実物は持っていないので商品リンクを)
上の「写ルンです」に装填されているフィルムはISO感度が400のもの。
ISO400のフィルムは今でも単体で販売されています。
一方、序盤で紹介した「ISO1600フィルムが装填された写ルンです」は既に生産終了していて、フリマアプリなどでちらほら未使用品を見かけることがあります。
以下の「写ルンです」がそのうちの一つで、「Night & Day Super」という夜景にも対応したものです。
他にも何種類かISO1600フィルムが入っている「写ルンです」はあります。
高騰中の”NATURA 1600″
「Night & Day Super」 に装填されているISO1600フィルムの正体は「FUJICOLOR NATURA 1600(以下、ナチュラ)」なのでは?という噂がネット上でちらほら見られます。
実際、直近で富士フイルムから販売されていたISO1600のフィルムはナチュラで、これを 「Night & Day Super」に流用していると推測できます。
さらに遡ると「Venus 1600」という高感度フィルムも販売されていました。
いずれのフィルムも生産・販売は終了していますが、特にナチュラの方はなぜか中古市場で高騰しており、1本3000円を超えています。
ちなみに販売終了時2017年?頃の定価は3本セットで2280円。
某フリマアプリでは、投機目的と思われる価格で売られていることがほとんどです。
富士フイルム公式の技術レポート
上述した「ナチュラが特定の写ルンですに装填されている説」は、富士フイルムの公式レポートを覗くと明らかになります。
富士フイルムによる公式レポートでは、Venus 1600が「写ルンですNight & Day」に展開しているという記述があります。(※1)
また、Venus 1600は高感度フィルムカメラ(F2.0レンズ採用)の販売とともに、Natura 1600に名称変更していることも明記されています。(※2)
したがって、「写ルンです Night & Day Super」にはナチュラが使われているのはほぼ確定と言えるでしょう。(”Super”の有無の差は、本体のメカ機構側の差であると考えている)
引用元:富士フイルム研究報告(以下リンクを参照)
※1 高感度ネガ「Venusシリーズ」の開発と新コンセプト「写ルンです Night & Day」への展開
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作例:TRIP35での撮影結果
今回は「写ルンです Night & Day Super」から抜き取ったISO1600フィルムを、OLYMPUS TRIP35に再装填して撮影してみました。
高感度フィルムなので、やはり夕暮れ時や夜景がどのように写るかが興味深いところです。
日中の撮影ではカメラの設定をISO400にして撮影し、写真として成立するかもチェックしてみました。
なお、フィルムは有効期限が12年前の2009年に切れている2本を使いました。
以下の作例の説明では、Ⅰ、Ⅱのようにフィルムを区別しています。
フィルムⅠのほうが劣化が進んでしまっています。
夕暮れ時&夜景
まずは太陽が沈んだ後のトワイライトな時間帯にて。
F値:Auto
露光時間:Auto
ぎりぎりTRIP35のAutoで撮影できた一枚です。ISO設定は400。
口述しますがTRIP35は太陽電池を積んでいて、それに入射する光の量に応じて露出とシャッタースピードが自動で決まります。
色合いはそこまで狂っていないですが、粒状性が悪いです。
次は夜の路地裏の飲み屋です。
F値:2.8
露光時間:1/30 秒
こちらはマニュアル設定で、最も光を取り込める条件で撮影しました。
粒状性は先の夕景より少しマシですし、色合い、雰囲気が完璧です。これは好み。
同じ12年の期限切れフィルムですが、やや劣化具合に差が見られますね。
より安心して夕方以降の暗い環境で撮影したい場合は、期限切れの年数を厳しめに見ておきましょう。
“12年”は当たり外れが半々くらいかもしれません。
日中の屋外&屋内の照明下
次に日中や屋内の照明下での作例です。
まずは真昼の一枚。
F値:Auto
露光時間:Auto
もちろんAuto設定で撮影でき、色合い、明るさも問題なしです。
ただ、明るくても粒状性は悪いです。期限切れフィルムにそこは期待しないでおきましょう。
次はフィルムⅠによる空港での手荷物検査時の写真です。
ISO1600(高感度)なのでX線検査の影響を考慮し、”カメラ”であることの証明のためにテキトーに撮った一枚です。(フィルムをカメラに装填している場合、検査官に1枚撮ってみてと言われる)
F値:4.0
露光時間:1/30 秒
マニュアル設定で、絞りを開放寄りにして撮影。
粒状性は悪いけど色合いは問題なさそうです。
次は劣化の少ないフィルムⅡでの屋内撮影。布のお店のディスプレイです。
F値:2.8
露光時間:1/30 秒
十分な露光量で色合いも良いです。
店の外から撮ったけど、許可取った方がよいのかな?取った方がよいだろうなぁ。
なお、フィルムⅡはフィルムⅠでの撮影結果を反省して、絞りはマックスの2.8で撮影しています。
以上、色々な明るさの環境でテスト撮影をしてみました。
手持ちのISO1600フィルムで最も古い”12年もの”を使いましたが、何とか写真として成立するレベル。
TRIP35での撮影方法
余談ですが、TRIP35の機構の話を少し。
TRIP35はセレン光電池(太陽電池の一種)を用いた、オートで露出を決定できるフィルムカメラです。
つまり露出計に連動して絞りやシャッタースピードが決定されます。(オートモード)
しかしフィルムの感度はISO400までしか対応していないので、ISO1600のような高感度のフィルムを使う場合、妥協してISO400の設定で撮影するか、マニュアルモードを使います。
マニュアルモードは構造上、シャッタースピードが1/30秒で固定です。つまりF値のみをマニュアルで設定します。
具体的には下図にあるF値のリングを回して、F値をA(Auto)、2.8~22のいずれかに合わせる。
ISO設定値も合わせます。(昔はASAと呼ぶのが主流だった?)
ちなみにオートモードでは、光量に応じて1/30秒と1/250秒で切り替わり、F値も2.8~22で丁度良い値に定まります。
しかしオートモードでは、暗い場所では光量不足による失敗を防止する仕組みがあるので撮影できない。
そのため、夕景や夜景での撮影時には、マニュアルモードで撮影します。
F値を決める際は、2.8で固定でも良いような気がしますが、厳密に調節するには別途露出計が必要になります。
スマホアプリの露出計を使う手もありますが、私は小さなデジカメでSSを1/30 秒、ISO感度を1600に設定した状態で、デジカメに表示されるF値を読み取ります。
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退屈しない人生を共に
「写ルンです」からフィルムを抜き取ってTRIP35で撮ってみるという遊びをしてみました。
今回は12年の期限切れフィルムだったので粒状性に難があった。
それでも色合いはそこまで崩れていなかったので、手持ちのもう少し新しいフィルムで再トライしてみようと思います。
わざわざ「写ルンです」から抜き取ってまで、ISO1600のフィルムを使うメリットはあんまり無いような気がするけど、おてて動かすの楽しいし良いんです。
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